15. 配布物のループ
「これ後ろに回しといて」。紙束を受け取り、机の列に沿って配っていく。任されたというほどではないが、放っておかれてもいない。中間の温度が、今日はちょうどいい。
受け取る手の温度、紙が擦れる音、ホチキスの角が袖に触れる感覚。些細な往復の中に、無言の承認が混じる。教室の空気は変わらないのに、自分の輪郭がわずかに安定していくのがわかった。
最後の一枚を渡し終え、空になった手の平を見つめる。何も持っていない手は、何かを持つ準備ができている手だ、と唐突に思った。
伝達事項を黒板に写す役が回ってきて、白い線を二本引いた。大した仕事ではないが、誰かの視線が数秒だけここに集まった。その数秒が、今日の支えになった。
黒板消しを手に取ると、粉の匂いが鼻にささり、思わずくしゃみが出た。笑いが一つだけ起き、すぐに収まる。何でもない瞬間が、日付の角に丸みをつける。
受け取る手の温度、紙が擦れる音、ホチキスの角が袖に触れる感覚。些細な往復の中に、無言の承認が混じる。教室の空気は変わらないのに、自分の輪郭がわずかに安定していくのがわかった。
最後の一枚を渡し終え、空になった手の平を見つめる。何も持っていない手は、何かを持つ準備ができている手だ、と唐突に思った。
伝達事項を黒板に写す役が回ってきて、白い線を二本引いた。大した仕事ではないが、誰かの視線が数秒だけここに集まった。その数秒が、今日の支えになった。
黒板消しを手に取ると、粉の匂いが鼻にささり、思わずくしゃみが出た。笑いが一つだけ起き、すぐに収まる。何でもない瞬間が、日付の角に丸みをつける。