19. 願書のインク
机に願書を広げ、慎重に文字を置く。誤字を恐れてゆっくり進むと、紙の手触りが指に移った。インクが乾くまでのわずかな時間、廊下の向こうで部活の声が跳ね、体育館のボールが床を叩く音が響く。
未来は遠い。けれど、紙の上では近い。行をまたいで伸びる自分の筆跡を見ていると、明日の地図が薄く透けた。折り目をつけずに封筒へ滑り込ませ、胸の前でそっと押さえる。脈が、すこし整った。
封を閉じる糊の感触が、指に薄く残る。投函口に入れるときのわずかな抵抗を想像して、胸の内側でカチリと音が鳴った。向こう側へ送る準備はできた。
ポストの前で一呼吸おき、封筒の角を指で整える。投函の音は小さかったが、胸の内側でははっきり大きく響いた。
未来は遠い。けれど、紙の上では近い。行をまたいで伸びる自分の筆跡を見ていると、明日の地図が薄く透けた。折り目をつけずに封筒へ滑り込ませ、胸の前でそっと押さえる。脈が、すこし整った。
封を閉じる糊の感触が、指に薄く残る。投函口に入れるときのわずかな抵抗を想像して、胸の内側でカチリと音が鳴った。向こう側へ送る準備はできた。
ポストの前で一呼吸おき、封筒の角を指で整える。投函の音は小さかったが、胸の内側でははっきり大きく響いた。