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未読

03. 見えない糸、未読の点

あらすじ:スペースとwanの通知。未読が増えるたびに心拍は等速で鳴る。
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放課後、ポケットの中でスマホが震えた。スペースから「生きてる?」。返すべき一言が喉に引っかかる。続けてwanの投稿が流れ込む。くだらない文章とくだらない画像で、こちらの重さを軽くしようとでも言うみたいだ。笑えそうで、笑えない。

未読は増えるが、心拍は等速だ。返信の指は固まり、代わりに床を転がった消しゴムを拾って同級生へ渡す。「ありがと」。たった二文字が、未読の数字より確かな質量で掌に残る。見えない糸は、画面の外にもある。切れていない。

昇降口を出ると夕立ちの匂いがした。湿った空気に画面の光がぼやける。未読の丸い点を指先でそっと撫で、消さないままポケットに戻す。返せない言葉も、ときに返事になる。