07. 棘と苗字
階段の踊り場で笑い声。「あいつ、ネットでやらかしたってさ」。棘のような囁きが皮膚をかすめ、反射で足が止まる。視界の端がじわりと滲んだ。
午後の数学、先生が名簿を見て言う。「茂木くん、黒板頼む」。前に出て、チョークを握る。係数が絡み、途中で迷い、深呼吸してから並べ直す。数字が整列した瞬間、背後で小さなざわめきが生まれた。苗字は、過去の呼び名と違い、たった今の自分を指す音だった。呼吸が戻る。
教室へ戻ると、窓の外で雲が速く流れている。誰かの視線が過去に繋がっても、今この手の温度だけは現在に留まる。自分の場所は、案外こういうところに生まれる。
チャイムが鳴る前、教卓の上でプリントが風にめくれた。誰かの笑い声が遠のき、筆箱の開閉音が近づく。世界は少しだけ配置換えされ、息がしやすくなる。
午後の数学、先生が名簿を見て言う。「茂木くん、黒板頼む」。前に出て、チョークを握る。係数が絡み、途中で迷い、深呼吸してから並べ直す。数字が整列した瞬間、背後で小さなざわめきが生まれた。苗字は、過去の呼び名と違い、たった今の自分を指す音だった。呼吸が戻る。
教室へ戻ると、窓の外で雲が速く流れている。誰かの視線が過去に繋がっても、今この手の温度だけは現在に留まる。自分の場所は、案外こういうところに生まれる。
チャイムが鳴る前、教卓の上でプリントが風にめくれた。誰かの笑い声が遠のき、筆箱の開閉音が近づく。世界は少しだけ配置換えされ、息がしやすくなる。